「二つの祖国」山崎豊子著
山崎豊子さんの作品を読むのは、まだ2作目なのだけれども
昭和時代のフィクションで、日本人のオリジナリティがよく描かれていて
学校で学ぶ歴史からは知りえないストーリーを「二つの祖国」から学んだ。
天羽賢治という日系二世が主人公として登場するこのストーリーの中で
3年、4年もの年月をともに過ごしたような妄想にふけった。
太平洋戦争は、多くの悲しみを生んだ歴史的事実であり、自分が経験しえない事実がそこにある。
場所は、アリゾナ砂漠のキャンプ。
1941年12月7日の真珠湾攻撃の日以来、敵国人としてアメリカに住む日系民間人がそこに収容されていた。
有刺鉄線は中に向き、日系人の牢獄。
ナイフ、はさみなどの所持は許されておらず、食事用のスプーンが紛失したというだけで、
収容者を真っ裸で100度を越える戸外に列に並ばせ、床を引っぺがしたり、点検を行うこともあった。
同じ人間ではないものとして人を扱う様は、永遠に考えさせられる。
日本軍が満州でしてきた残虐な行為に限らず、歴史的な罪に加害国、被害国は存在し
その代償を払うのは、当事者ではなく、同じ人種である人々。
歴史に関わる人物が下す決断は、本当に多くの犠牲を生むこともあり
歴史は単に繰り返されるだけではなく、作られた限り、そこに流れが生まれ
人はその流れに沿わざるを得ないのだと深く思った。
収容所に入れられた日系人は、リトルトーキョーに住み、レストランやランドリーなどを営んで
生活をしていて、決して楽な生活をしていたわけではない様子が描かれていた。
そこからマンザナール収容所での生活が強いられた。
マンザナール収容所には1500人ほどが収容され、主人公の天羽賢治もここにいて
持ち前の日本男児の気質で周りからは一目置かれる存在だったし、どうしたらこんなしっかりした
生き方を貫ける人が育つのかと考えさせられた。
天羽賢治は惚れ惚れとする九州男児で芯の強さがよく現れている。
この本を読んだ感想は一言では終えられないけれど
彼の生き様は、まさに太平洋戦争の時代、悲しみと愛のドラマを
写していた。
出来事に対して、被害にあうものと、被害を加えるものがいる。
この両面がすごくよくみえて、自分の祖先がその時代を歩んだという事実を
組み込むことはむつかしても、彼の生き様を追うことでその時代を知ることが出来たのでは
ないかと思う。
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